2012年6月2日
直江アワードに賛同する
京都大学大学院経済学研究科 教授 依田高典
直江先生との出会いがなければ私が情報通信経済学を専門とすることはなかったし、情報通信経済学を専門としなければ私が多少の学問業績を残すこともなかったろう。生活費を奨学金とアルバイトで稼いでいた私のために援助金を用立てるように直江先生に申しつけたのは私の恩師・伊東光晴先生だったろう。金額は数十万円の前半だったが学術振興会特別研究員に選ばれるまでの2年間それなりに有難かった。そんな縁もあり直江先生の授業に顔をのぞかせるようになったのが情報通信経済学者としての原点だ。文字通り現金な話だ。
純粋理論を研究していた私にとって当初はこんな「俗」な学問分野もあるものかという程度の感想だったが、ゲーム理論的産業組織論の隆盛と共に情報通信産業は注目の高い学問分野の一つになった。
直江先生に学問上のことでとやかく言われたことはない。情報通信を研究しろと言われたことすらない。君には才能があるからと暖かく励ましてくれた。いつの世も学者志望の学生は根拠のない自信と将来の生活の不安の挟間で揺らいでいる孤独な存在だ。そんな時、絶対的な支援者が居てくれることは自分を信じる原動力になるものだ。
直江アワードがこれからも若き才能を励ましてくれることを心からお祈りします。